夏に陸前高田を訪れる前に、東京でも確認できる文献で、北限のゆずの歴史の手掛かりを探しています。
初めに確認したのは、陸前高田市史編集委員会編『陸前高田市史』。
1990年代から2000年代にかけて発刊されたもので全12冊あります。
しかし、柚子についての記載がなかなか見つかりません。
第1巻「自然編」には「北限と南限の植物」という節があり、期待したのですが、なんと柚子は掲載がありません。
かつて柚子は釜石市あたりまで生息していたためでしょうか。
ただ一言、
「陸前高田市内に柚子が生息している」
という記載だけは発見することが出来ました(57頁)。
かつて市内の柚子は庭木として植えられており、自家消費や近隣へのおすそ分けとして使われていたと聞いていたため、期待せずに手にした第9巻「産業編(上)」。
こちらは案の定、果樹については、梨、りんご、ブドウの記載しか発見できませんでした(352頁)。
では、食や住と関連して言及されているのでは、と気を取り直して第5巻「民俗編(上)」。
この巻には、山林原野から取得していた果実(124頁)や、本格的な果樹栽培ではなく自家用として育てられていた果樹(136頁)が掲載されているのですが、どちらにも柚子はありません。
ようやく、戦時中の1940年、高田尋常高等小学校が調査した「日常食品の栄養調」の中に柚子を発見しました(103頁)。
当時も柚子は日常的に食べられてはいたようです。
柚子の他に「日常食品の栄養調」に掲載されていた果物は
林檎、葡萄、バナナ、櫻桃、苺、西瓜、桃、梨、柿、密柑(ママ)、夏密柑(ママ)
今と変わらないくらい、様々な果物を食べていたのですね。
北限のゆずの歴史調査としては、前途多難な滑り出しとなってしまいましたが、『陸前高田市史』は、こんなことまで調べたのか!!という内容が満載で面白いです (笑)
北限のゆずについてご存知の方、どのようなことでも構いませんので、是非、情報をお寄せください!!
北限のゆず調査団 筒井久美子(早稲田大学講師)
【引用文献】 陸前高田市史編集委員会編、1993、『陸前高田市史第1巻 自然編』陸前高田市 陸前高田市史編集委員会編、1997、『陸前高田市史第9巻 産業編(上)』陸前高田市